1時間10分後。(つた)が絡まる赤い屋根のレンガ倉庫に着いた。

 この場所は海外から貨物船が入ってくる港にあり、
 屋根には粉雪がまるでガトーショコラに振りかける粉砂糖のように積もっていて、
 1階の扉、2階の四角い窓、3階の丸い窓は全て粉雪みたいに白い。

 こ、怖かったぁ…。
 私、よくヘルメットなしでここまで来れたな…。
 死ぬ気で耐えればなんとかなるもんだね…。

 氷浦(ひうら)の特攻服を着た(りゅう)くんは腰にしがみついて震えている私の手に自分の手を重ねる。

「怖かっただろ?」
「お前、根性あるな。さすが俺の姫だぜ」

 (りゅう)くんの手の温もりと優しい言葉で安堵し、私はぽろぽろと泣いた。
 涙と手の震えが止まると、お互いバイクから降り、特攻服と黒のハーフコートについた粉雪を払う。

「ここは?」

「俺と兄の家で、氷浦(ひうら)のアジトでもある」
「両親の家にはしばらく帰ってねぇ」

「そっか…」

 バイクから降り、(りゅう)くんは鍵を開けて、黒いレバーを軽く上にあげ、手前に引き、扉を開ける。

 中に入ると(りゅう)くんも入り、扉を閉めた。

「飲みもん、ミルクティーでいいか?」

「あ、うん」