「久しぶりだね、雪乃(ゆきの)
 6代目総長氷浦(ひうら)の白い特攻服を着た白坂(しろさか)さんが歩いて来た。

 外に跳ねた白のセミロングは昔よりも伸びている。

 え、(りゅう)くんのお兄さん!?

「お、お久しぶりです」

「OBと見守りってことで参戦したよ」
「やっとこの日が…」
「兄さん嬉しいよ」

「6代目総長が泣いてんじゃねぇ」
 (りゅう)くんが冷たく言うと、白坂(しろさか)さんは涙を腕で拭う。


「じゃあ正式に(りゅう)の姫になるということで“今から口づけ”してもらおうか」


 え……。

「それは約束には入ってなかったですよね…?」

「あれ? 言ってなかったかな?」
「ウチの族は代々、姫を貰う時、仲間の前で口づけするんだよ」

 何それ……聞いてない。

 白坂(しろさか)さんは耳元で囁く。
(りゅう)の姫になる覚悟で来たなら、それちゃんとみんなに示さなきゃね」

「っ…」

 バイクのエンジン音が聞こえた。

雪乃(ゆきの)!」

 え、(そら)くん、なんで……。
 追いかけて来てくれたの?