11月25日の朝。通学電車の中で私は扉近くの座席に座っていた。

 初めて(そら)くんと一緒に座れた…嬉しい。

「…ねぇ、写メの子じゃない?」

「…うわ、本物。地味でボサ髪」

 つり革を掴んだ茶髪ヤンキーと金髪ヤンキーの女子生徒達が私の前でコソコソと立ち話をする。

 はい、地味でボサ髪です――じゃなくて。

 写メの子!?
 しかもよく見たら同じ制服着てるし…恐らく3年の先輩達だ…。

 私は動揺する。

 土日であのデート写メ、先輩達にまで広まったんだ……。

「…星羽(ほしばね)高の(りゅう)くんと付き合ってるんだよね?」
「…なんで(そら)くんと一緒に座ってんの?」

「…(そら)くんが義妹役だからでしょ」
 金髪ヤンキー女子の問いに隣の茶髪ヤンキー女子が答える。

「…ありえない、2マタじゃん。1年のくせに」
「…(りゅう)くんよく許してんね」

「…それだけ寛大な彼氏ってことだよ」

 表向きの彼氏は(りゅう)くん。

 だけどほんとうの私の彼氏は、
 隣に座ってる黒沢宙(くろさわそら)くん。

 綺麗な紫髪で、
 昼間はイケメン高校生、
 夜は暴走族鬼雪(おにゆき)の5代目総長……。

 なのに、堂々と付き合えないのが悔しい。

 ぎゅっ。
 (そら)くんは誰にも見えないよう、背中の後ろで私の手を握る。

 あ、手握られて……。

 このまま扉が開かなければいいのに。
 そしたらずっと手を繋いでいられるのに。