「別にいいでしょ」
「ちょっと自販機まで行ってジュース買ってくるだけだから」

「何? 1円も稼いでないあんたが私に口答え?」
「やっぱり、あのクズ男の子ね」
「わざわざ遠い高校選ぶわ、高校生になったらなったでそんな頭しだして」
「何? バツ2の私に対する嫌がらせ?」
「看護師として日々働いて、たっかい授業料払ってやってんのに!」
「この穀潰(ごくつぶ)しが!」

 違う。
 遠い高校を選んだのは(そら)くんとの約束を果たす為で、
 髪は目立ちたくないからなのに。

 でも、言ったところで、信じてなんてもらえない。

 私の両目が潤む。

「っ…」
 私はお母さんに背を向けて、玄関まで走る。

 そしてスニーカーを履き、家を出た。