だけど、幸せな気持ちはすぐに掻き消される。

雪乃(ゆきの)、何よそのボサ頭は!」

 パチーン!
 シルバーのネックレスを首につけてTシャツの中に入れ、部屋を出て居間に行くと、お母さんが右の頬を平手打ちした。

 私はこんなお母さんと15階建てのマンションの6階の部屋に住んでる。

 私の部屋はシンプルで可愛く、
 学習机とか、必要最低限の物しか置いてないけど、

 お母さんの部屋は鞄とか服とか靴でごちゃごちゃしていて、
 居間も片付けてなくて汚い。

 おまけに……う、酒臭い。

 私は部屋に充満する酒臭い匂いに顔をしかめる。

 缶ビールや瓶が転がっていて、キッチンの流しも洗っていない食器で埋まってる……また片付けなきゃ…。

 前は綺麗好きなお母さんだった。
 でもバツ2になったお母さんは変わってしまった。

 私は熱くなった右の頬に触れる。

 頬がじんじんする。
 心も痛い。