そんな考えを膨らませているうちに時間は過ぎ、あっという間に放課後の時間になってしまった。
帰りの会も終わり、ゾロゾロと教室を出ていく生徒たちを横目にふと早坂くんの席に目を向けると彼はもう居なかった。
もう帰ったのだろうか?
それとも、図書室に本当に行ったの?
いや、そんなことはどうでもいいしどっちでもいいことだ。私には関係ないし。。。
だけどもし、今ここで図書室に向かわずに勝手に家まで帰ってしまったせいで明日私の秘密をバラされたとしたら?
という不安が拭えない。
だけど、早坂くんの言う通り図書室に行って襲われたら?
いや、それは流石にないか。
うちの図書室は放課後おっぱじめれるような場所じゃないし。。
もし何かあれば大声で叫んだり、スクールバックで殴ればいいだけだ。
念の為いつもより沢山スクールバックに教科書を詰めて、いつでも殴れるように準備した。
それにもしかしたらただのネタでからかってるだけで早坂くん本人は居ないかもしれないし。
………………………という訳はなかった。
「あ、本当に来てくれたんだ。嬉しいな。」
図書室に入ると、そこには早坂くんが1番奥の席に座りながらいつもは掛けてない黒縁のメガネをかけながら小説を読んでいた。
「や、やっぱり帰る。」
期待していた結果とは違い、図書室には私と早坂くんしかいなかった。
「まってよ、俺ここで神楽坂さんをとって食うって訳じゃないし、せっかく来てくれたんだし少し話そうよ。」
早坂くんは帰ろうとする私に向かってそういった。
「私は話すことなんてないし、正直私は早坂くんに顔を合わせるのも恥ずかしいし…」
私の話を遮るかのように早坂くんは言う。
「俺さ、今すごい神楽坂さんの事が気になってるんだ。」
「……………………はぁ?」
「俺、神楽坂さんを始めてみた時人形みたいに綺麗な顔と、透き通るような白い肌に艶のかかった長い黒髪で、勿論成績も優秀。」
早坂くんは息継ぎも忘れたかのように話す。
「だから…さ。同級生の男達が神楽坂さんを見て綺麗だと称えたり完璧すぎるって理由で恋焦がれてて、こんな完璧で欠点が何一つない人間をなんで付き合いたいだの好きだの言えるんだろうなって。」
私の目を、じっと見つめる。
「…………悪口が言いたいなら私本人に言わずに友達にでも話したら?聞きたくな…」
「でも昨日俺は神楽坂さんが気になる存在になったんだ。」
胸がドキッと鳴る。
でもこれは早坂くんが私の心を落としてあげたその行為にドキッとしただけだ。別にそれ以外は何も無い。
「あんなに全く隙が無かった神楽坂さんが、TL本を読んでるなんて思いもしなかった。」
早坂くんはかけていたメガネを外して胸ポケットにしまうと、丁寧に椅子を引いて立ち上がり、私の方に向かって歩いてくる。
「な、何?近寄らないで」
5歩ほど後ろずさりをした所で、本棚が壁になり逃げ場が無くなる。
止まらずこちらへ向かってくる早坂くんに目を背けて瞑る。
足音が目の前で止まった音がする。
恐る恐る目を開けてみると、目の前に早坂くんが立っていた。
至近距離で見るのは初めてで、綺麗な瞳を見つめ続けるのは心臓に悪いので逸らす。
早坂くんが耳元に顔を近づけてきたので、ビクッと肩を震わした。
それに気づいて少しフッと微笑むと、こう言った。
「秘密をバラさない代わりに、あの漫画みたいな恋人ごっこにつきあって。」
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