春待ち遠し〜短編集〜

狭く、暗い路地を歩く。

かろうじて月の光が武司と優子を照らしていた。


『今だから話すけど、タケ。…アタシ、ずっとタケの事……好きだったんだよ』


少し甘えた声で優子は囁いた。


『嘘つけ…』

初恋の優子として受け止めればいいのか?

奈美が頭に浮かぶ。


『ホントだよ。今日だって、康夫くんが、タケくるから来いって行ったから…!』


思わず驚く武司。

一ヶ月前の康夫との会話を思い出す。