売られた令嬢

食事を終えて執務室に戻る途中…ロレッタの姿を思い出して笑みがこぼれる。

ベッドの上で見せる表情と先程の表情と色んな顔を見せるロレッタは見てて飽きなかった。

今朝も…

フレッドは髪を触る。

ロレッタの華奢な手が自分の髪に埋もれていてなんだかむず痒かったが…嫌ではなかった。

今まで女とは甘やかせるものだと思っていたが…甘えるのも悪くないのかもしれない…

部屋の目の前に着くと顔を引き締める、どうもロレッタの事を考えると頬が緩む気がした。

扉を開けると調査に出していたシドが戻っていて、机に向かっていたが自分が入るなり顔をあげた。

「どうだった?」

顔を見るなりそう聞くと

「その前に労いの言葉はないんですか~?一晩で移動してすぐに帰ってきたんですよ…」

疲れた様子でため息をつく。

「それよりも早く言え」

先を促すと…

「はぁ…王子の思った通りのようですね、あれは王子の婚約者でしたが今は違うようです」

「どういう事だ?」

「どうもロレッタ様は最初、ジョージ王子の婚約者でしたが婚約破棄され、妹に婚約者の立場を取られたらしいです。あの国を食いつぶしている悪女は妹の方でした」

「あの野郎…俺は婚約者を寄越せと言ったのに…いや、でも来たのがあのロレッタ…うむ、悪くなかったな…」

フレッドは間違えてきた事が帰ってよかったと頷く。

「ですがあの国はもう駄目ですね、あんなに借金をこしらえて我が国からお金を借りたのに懲りずにまた金を湯水のように使っております」

「あの馬鹿王子…」

フレッドは顔を顰めた。

「あいつらがどうなろうと構わんが国が滅びるのはよくない…うちが買い取るまでどうにか持ってて欲しかったが…」

「まぁ近いうちにまた泣きつくのでは?もう城下では民達の不信感が募っておりました。暴動が起きるのもすぐかと…」

「そうか…この事はロレッタには伝えないように」

「えっ?言わないのですか?」

シドが驚き、フレッド王子の顔を見つめた。

「ロレッタにしてみれば祖国だ、それが落ちる姿など見聞きしたくあるまい…しかも元婚約者と実の妹が食いつぶしているんだ」

フレッドの言葉にシドは言葉を無くして口をあんぐりと開けていた。

「なんだ…その顔は」

フレッドがシドの呆けた顔を睨みつける。

「王子が女性にそのように気を使うとは…いつも寝れば飽きてお終いのフレッド様が…ロレッタ様にそこまで?」

「うるさい!少し…同情しただけだ」

「本当ですか?」

シドは怪しむ様に顔を覗き込んでくる。

「……」

「そういえば聞きましたよ…王子がベッドを共にして寝なかったのは初めてでしたね…ようやく落ち着いて相手を見つけてくれたのならよかったですが…」

「それは…今夜にでもと思っていたところだ!」

「そうですか…では今夜は部屋に近づかないように兵士達に伝えておきますね」

シドは笑って恭しく頭を下げた。




夜になりフレッドは少しだけ緊張した面持ちで寝室へと向かった。

シドにあんな事を言った手前何もしない訳にはいかなかった…

本当はもう少し優しく…ゆっくりと奪いたかった…

フレッドはそっと扉を開く。

「あっ…フレッド様…」

そこには肩まで出したネグリジェを着たロレッタが体を固くして椅子に軽く腰掛けていた。

その姿に思わず笑みがこぼれる。

「どうした?何を待っている?」

まるで仔犬の様に待つ姿に少し意地悪をしたくなり笑いながら聞いてみる。

「フレッド様を…待っておりました…」

恥じらうように答えたロレッタに年甲斐もなく唾を飲み込んだ。