「……ドキドキする、りっくん」
「……っ、一生、してなよ。俺にだけ」
ドキドキするから離れてほしいし、きっと汗をかいてるから近づいてほしくないのにこの距離のドキドキが嫌いじゃなかったりして。
もっとオオカミなりっくんを見せて、って。
もっと色んな顔を見たい、って。
もっと知りたい、って。
そう思うのはただの好奇心?
「俺でいっぱいになった?」
吐息がかかるくらい近い距離のりっくんに、私は嘘をつけなくて小さくうなずいた。
満足そうに笑ったりっくんは私から離れて立ち上がった。
授業が始まる五分前を知らせる予鈴が校舎内に響く。無機質なチャイムの音が合図のように、私に笑いかけたりっくんはもういつものりっくんに戻っていて。
「帰ろっか、蓮見」と手を差し伸べてくれるから触れることにドキドキしながらも、手を取る。
ぎゅっとした手が熱かったのは、初夏の太陽のせいですか?私の手の熱さだってきっと、それのせい。
飲み終えてないいちごオレと、手をつけていないスノーボールクッキー。
イレギュラーな水曜日。