「……汐架をイライラさせるそいつも腹立つし、今は汐架にも腹立ってるよ。その放送担当のヤツって、男でしょ?俺の前で他の男の話なんかすんなよ」



"汐架"と呼ぶ君は明らかにいつもとは違う、きっと私だけが知ってる柳本璃玖くん。……なんて自惚れかもしれないけど。


何度汐架と呼ばれても全然慣れる気配はしない。


掴まれていたほっぺは離れるけど、顔の向きは逸らすことができない。言葉の真意がわからなかったせいで。



りっくん、それは一体どういう意味で言っているの?




「汐架は俺のことだけ考えてろよ」




私の隣、と場所は変えないまま、りっくんの手が私の頭の横について逃げ場をなくされる。さっきまでより格段に密着して、心臓の音はうるさくなるばかりで。


今度こそ大野くんのことなんて忘れて消えて、りっくんが支配してくる。


言われたとおり、りっくんのことしか考えられない。