「私だって本当は余裕持って学校に来たいのに〜」

「まぁでも、朝から好きな人と一緒に来れるなんて。羨ましい。羨ましいにも程がある」

「……や、待ってよ。いつも言ってるじゃん、りっくんは"推し"だって」



またこれだ。那奈はほんと、わかってるようでわかってない。


いつも言ってるのに。"推し"と"好きな人"の違い。那奈は未だに、私がりっくんに"恋をしている"と思っている。


推しへの感情は"人間的に尊敬"。

恋愛対象?いやいや違う、観察対象。



ちらりと教室の後方に目線を移す。
輪の中心で一際背が高くキラキラした笑顔でたくさんの人が周りに集まっている。


みんなりっくんのことが好きで、りっくんと話したくて休み時間になればりっくんの元に人が集まる。


そんな人。男女問わずみんなに好かれて、みんなを笑顔にする魔法使いみたいな人。


魔法使い、いやりっくんはこのクラスの王子だった。プリンス。白馬の王子様!