わたしの推しはオオカミ王子さま



座る私の目の前に立って腕を組みながらニヤニヤしている那奈。わかるよ、那奈。あなたの言いたいことはわかっています。



「なーぁに?那奈」



わかっているけど、一応聞いてみる。

首を傾げて、嘘っぽい笑顔を那奈に向ける。



「こっわ、汐架(しおか)のその笑顔怖い」

「だってまた言うんでしょ?『わざとギリギリに来てる』って」

「私にはそうとしか思えないからねー。りっくんと毎朝仲良く遅刻」

「だーかーらー!遅刻ではないんだって!」



少し怒ってみるけど、正直この話は遅刻だ遅刻じゃないは関係ない。


那奈には去年から、この疑いをかけられ続けている。