わたしの推しはオオカミ王子さま



落とした鞄を拾いつつ、ぶつぶつ呟きながら近づいてくる那奈。

……なんか、いつにも増して不気味なんですけど!この言い方じゃいつも不気味みたい!そうではないのだけど!



誰に弁明してるのかすらわからない心の声は当然那奈に伝わるはずもなく、思わず立ち上がる。

でもそれ以上後ろに下がれなくて、目の前に那奈が立った時にはもうすでに、私の方ががっしりと掴まれていた。



「ひいっ」



那奈の迫力になにをされるのかとそんな声を出して目を瞑るけど特になにも起こらず目を開けると那奈が不思議そうにこちらを見ていた。


いや、考えてみればそう。いくら不気味だったからって私に危害を加えるわけなかった。なにを考えてるの私は。