わたしの推しはオオカミ王子さま



それは残念。むぅ、とふくれるようにして教科書を広げた机にうなだれるように突っ伏せると、前のドアから、バン、鞄が落ちるような音がした。


その音にビクッとして顔を上げると、まるで教室で殺人事件でも起きているかのように驚いた顔で、

いやもはや驚きなんて通り越したと言わんばかりに目と口が最大に開いた那奈が、そこに立っていた。



何をそんな、驚くことが。何もない。



普段通りの教室、変わったことは何もない……いや、あるじゃないか。



誰もいないこの早い時間に、私がいることが最大に異変じゃないか。

高校はおろか、人生でもこんな早く学校に来たことはなかったんだから。




「……雨が降る……明日は大雨、いや大嵐、大荒れ、日本列島大荒れ……」