わたしの推しはオオカミ王子さま




「……なぁ、汐架?」



さらっと呼ぶから普段からそう呼んでるみたいな気分になるけどそうじゃなくて、そうか私は汐架って名前だったなって再確認する。


那奈に呼ばれたってなんとも思わないのに、りっくんってだけで自分の名前が特別になったみたいな気がする。




「他の男には触らせんなよ、髪」




反射的に、りっくんの方を見た。



なんていうか。



その声の感情が、声色がいつもと違った気がして。

自信なさそうな感じで、少しだけ小さく聞こえて。


りっくんは私の髪に触れる手は止めないで、だけど私の方は向いていなくてそっぽを向いていて。



「……うん」



私は小さく言って、頷く。

りっくんだから振り解けないんだよ。他の人なら、振り解けるから。



動けないのは、りっくんに対してだけだよ。



りっくんだから、きっと。

こうして触れられること、嫌いじゃなかったりするの。