先輩は、自らの手で光る銀色のブレスレットを、ごく自然な手つきで私の手首にはめた。



「ね?これ、俺がいつもつけてるやつなんだけど」



視線を落とすと、ブレスレットには〔Reo〕という文字が刻まれていた。


確かにこれは、高橋先輩がいつもつけているブレスレットに間違いない。



「えぇぇぇぇ!?」


状況を理解した瞬間、自分でも驚くほど大きな声が口から飛び出る。


そして無意識に先輩の肩を押してしまった。



「うわ……っ!?」



先輩が飛ばされて、ベッドから転げ落ちた。



「わわっ!?す、すみません!!」



慌てて身体を起こす。



「大丈夫、ですか……?」



問いかけると、先輩は左手を押さえたまま苦々しく告げた。



「大丈夫じゃないね。多分折れてる」

「折れてる……!?」


そして、にやりと不敵な笑みをたたえると、もう一度ベッドに乗った先輩。


ぎし、とベッドが鳴った。



「お詫びしてもらわないとね」

「へっ……?」



思わず腑抜けた声が唇から洩れる。


お、お詫び……?


先輩は微笑を浮かべたまま、私の顔の横にトンッと手をついた。

(あ、あの。左手、普通についてるんですけど)