◇◇◇
ゆっくりと意識が浮上する。
白い天井が視界に映った。
しばやくぼんやりとその天井を見つめて、ここが保健室だということを理解する。
「あ、目が覚めた?大丈夫?」
横から声がして私は、ん?と頭をひねった。
この声、どこかで聞いたことがあるような……。
むくりと起き上がり、横にいた人物に視線を遣る。
(え?)
そこにいたのは、推しだった。
「すみません。大丈夫じゃないですね、あなたが推しに見えます。幻覚が見えてます」
はは、と乾いた笑いを洩らして強引に目を擦った。
パチパチと何度か瞬きをして、もう一度彼を瞳に映す。
「ん?」
けれど、何度見ても彼の姿は推しのまま変わらなかった。
疲れ溜まりすぎでしょ、私。
目の前にいるこの人が高橋先輩に見えるなんて、幻覚にも程がある。
ふ、とひとつ息を吐いて、もう一度ベッドに寝転んだ。



