準備をしていると、玄関のチャイムが夏波の到着を知らせる。
出迎えようとしたけれど、ふとその足を止める。
……お兄ちゃんに出てもらおう。
二人とも、どんな反応をするだろうか。
想像するだけで面白い。
リビングに身を潜めていると、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「はーい」と軽く返事をして出迎えると、案の定驚いたように目を見開く夏波と、好きが隠しきれていない兄の姿があった。
「ちょ、ちょっと沙羅来て!」
ぐいと私の腕を引っ張る彼女の手首で揺れる、シルバーのブレスレットが視界に入る。
二人の関係が推しとオタクじゃなくなる日は、案外遠くないのかもしれない。
了