絶対、落としてみせるから。


隣で沙羅がバッと手で耳をふさぐ。


一方、私はというと。



「はぁ……カッコいい……」



先程までの不機嫌さや苛立ちは、先輩の笑顔を一目見ただけで吹っ飛んでいってしまい。


ポワン、と先輩の姿に見惚れていた。


学園のアイドル、高橋玲央(たかはしれお)先輩。


背が高くて、運動神経抜群で、生徒会長も務めている。


そして何より、その端正な顔立ちといったら……。


可愛さとかっこよさを兼ね備えていて、髪はさらさら、そしてスッゴクいいにおいがするのだとか。


まるで漫画からでできたような、リアル白馬の王子様。


当然、この学園にもファンクラブというものが存在するわけで。


先輩がその存在に気付いているのかは分からないけど。



「今日も尊きお姿で……。生きててよかった」



手を合わせて拝むと、隣で沙羅がため息を吐いた。



「ねぇ。あんたにとって、先輩って宗教的な存在なの?」

「うーん、宗教かは分からないけど、とりあえず神だよね、神。神聖すぎて、誰も触れられない」

「うわ、重症だ」



顔をひきつらせる沙羅には悪いけれど、こうすることで私は今日も幸せな一日が送れるのだ。