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「あ、お兄ちゃん。そういえば今日、夏波が家に来るよ」
「は……!?」
告げた瞬間、バタバタと騒ぎ出す兄。
「な、何しに来るんだ!?」
「いや、普通に遊びにだけど」
別にお洒落をしろだとか、そういう意味ではなく、もし家のなかで会った時に恥をかかないよう言ってあげただけなのに、途端に焦り出す兄に苦笑する。
「別にお兄ちゃんに会いに来るわけじゃないんだよ?それにたぶん、夏波は私たちが兄妹ってこと知らないし」
こんな言葉は、兄の耳には入っていないようだった。
「やべ、香水ふってねぇ!!」
以前、どんなにおいがいいかと問い詰められ、選び抜いたシトラスの香水。
柑橘系は爽やかで夏にピッタリだし、男性にも人気の香りなんだとか。
「あと何分で来るんだ!?」
「15分くらいだと思う」
「なんだと!?」と頭を抱える兄。
「まずいぞ。香水は人と会う30分前につけなければならないのに……」
ごにょごにょとつぶやきながら騒ぐようすを見ながら、私はため息をついた。



