「おっ。おかえり」

ドアを開けると、高橋先輩がにっこりと笑みを浮かべて出迎えてくれた。

ううっ。心臓に悪い。

胸を押さえながら入室する。沙羅はそんな私のようすを笑いながら見ていた。


沙羅の部屋に入り、出された麦茶で喉を潤した。

「勉強、する?」
「……うん」

控えめにうなずいて、テキストを広げる。

けれど。

「推しと同じ屋根の下にいるとか、やっぱ心臓に悪い……」



課題は一向に終わる気配がなく。

部屋の外では蝉の声が、ミンミンと響いていた。