突然だが、私には"推し"がいる。



「きゃぁぁぁぁ!高橋先輩、こっち向いてぇぇ!」



甲高い声で叫ぶ女子軍に、私はギロリと視線を向けた。


(同坦拒否のガチリアコ勢、推すのはいいけれど、やたらと叫ぶものじゃないわよ。マナーもろくに守れないのかしら。呆れた)


辺り構わず大声をあげられては、先輩も良い気分ではないだろう。


一人のオタクとして、オタ活することに関して否定はしないけれど、活動の仕方は見直してほしいなと切実に思う。


ぐっと眉を寄せていると、隣にいた沙羅(さら)が「はは……」と苦笑いを浮かべた。



「もう少し静かに出来ないのかしらね」



そう言って私と同じように眉を寄せる沙羅。


私は共感の意を込めて、うんうんとうなずいた。


そんな私たちの横でなおも騒ぎ続ける女子たちに、くるりと振り返って手を振る先輩。



「きゃぁぁぁぁ!カッコいい!」



先程とは比べ物にならない黄色い悲鳴が、廊下中に響いた。