「はーい」と間伸びした声がしたかと思うと、ガチャリとドアが開いた。

顔を覗かせたのは、タンクトップ姿の───高橋先輩。


ん?この暑さで、とうとう私の頭が誤作動を起こしたのだろうか。


そう思い、表札を確認すると【高橋】という、苗字が刻まれていた。

「あ……すみません。高橋違いでした」

焦りながら飛び退くと、先輩はにこりと笑って後ろを振り向く。

「沙羅、夏波ちゃん来たぞー」

奥の方から「はーい、今行くー!」と声が返ってくる。
それは紛れもなく沙羅の声で。

混乱する私を見て、先輩はクスリと笑った。