「だったら俺は、夏波ちゃんの推しにはなりたくない」



聞いたことがないくらい低い声。


いつもニコニコと笑みを浮かべている先輩からは想像できないような声と表情に、ドクドクと鼓動がはやくなる。



「推しだから付き合えないんだったら、俺のことなんて推さないで」



切なる声に心が揺れる。


ぐ、と言葉を詰まらせていると、先輩は椅子からゆっくりと立ち上がって保健室の戸に手をかけた。



「お大事に、夏波ちゃん」



背中を向けたままそう言って、戸を開ける。


凹凸のはっきりした横顔が、その刹那私に向けられた。



「───絶対、落としてみせるから」