「先輩は私にとって"推し"なので、私なんかが触れるのすらおこがましいといいますか……!」



私の言葉に、先輩は眉を寄せて、視線を逸らす。


そして、悲しげにふっと笑った。



「要するに、恋愛対象としては見られないってことか」



この気持ちを上手く説明できなくて、うう、と頭を掻きむしりたくなる。


これが"推し"の難しいところだ。


私なんかが先輩の隣になんて、おこがましいにも程がある。


推し様は神であり、誰もその隣になんて並べないんだ。

私なんかが並んだら、汚してしまうから。


だけど、こんな心の葛藤は当然伝わるはずもなく。


先輩は唇を噛み締めて、私をもう一度まっすぐに見つめた。