数秒の沈黙の後。
「……今、何と?」
「だから、俺と付き合ってくれない?」
まてまて。
一旦頭のなかで状況を整理しよう。
多分、人生の中で今、一番頭を回転させてる自信がある。
この状況を端的に言うと、告白……されてる?
私が?
なんで?
考えれば考えるほど混乱してきて、私の口からこぼれたのは笑いだけだった。
「はは……冗談やめてくださいよ、先輩」
顔の前でヒラヒラと手を振る私に、先輩は間髪入れずに告げる。
「冗談なんかじゃない。本気だよ」
まっすぐに向けられた青い瞳には、偽りの色は見えなくて。ドクン、と心臓が大きく波打つ。
本気、なの……?
時が止まったように、周りの雑音が消えた。
ただそこにあるのは、お人形のような美形と、シトラスの香りだけ。
差し込む日光が先輩を照らし、影をつくった。



