屋上につき、2人とも無言だ。

先に沈黙を破ったのは蒼斗だった。

「えぇっと、、大丈夫か?」私は、首を前に振った。

「そうか、、」

助けてくれてありがとう。

勇気と声を絞って言った。

「屋上って最高だよな。」

うん、、私は下を向いたまま答えた。

「なぁ、、あれ見ろよ。」

そう言われたので、泣いたままのぐしゃぐしゃの顔のまま蒼斗が指差した方向を見た。

そこには、私が小さい頃習っていたテニスコートがあった。

懐かしいなぁ

「ん?何が懐かしいって?」

「私、小さい時、あのテニスコートでテニス習ってたから。でも、ある日初めて試合で負けてそれからテニスをやらなくなった。」

こんな話をしてしょうがないと思ったが、授業に行きたくない気分なので話を続けた。

「そこで出会った、唯一同い年の男の子のと仲良くなって、子のことが好きになったんだ。今は、顔も名前もほとんど忘れたけど、あの笑顔だけはどうしても忘れられないんだ。笑った時、クシャっとなる目尻、左側にエクボがあって、そのはじけた笑顔を見た瞬間恋に落ちた。」

流石に喋りすぎたと思い、口を塞いだ。

「ふーん。それだけ?」

えっ。

意外にも反応が薄くてびっくりした。

「俺も、実はあのテニスコートでテニスを習っていたんだ。小さい頃。そこで唯一同い年の女の子と会って、仲良くなって、その子を好きになった。いつも元気で、どんな時も負けず嫌いでまっすぐ、必ず自分の意見を通したいって子だったんだ。俺がそいつを好きになった理由だ。」

それを聞いた瞬間、心がモヤモヤした。

世界一嫌いな奴なのに、そいつに好きな人がいたって聞いた瞬間悲しくなった。

それなのに彼は続けた。

「そのうち、その子はテニスをやめた。俺は、その子をずっと探してた。」

探すぐらい、その子が好きだったんだね、、蒼斗モテモテだからそれぐらいの女の子がいてもいいよね。







「成瀬 凪!」







急にフルネームで呼ばれたのでビックリして、蒼斗の目を見た。

彼は笑っていた。

「俺がずっと探していた女の子は、お前だよ。ずっと好きだった。」困惑するしかなかった。

まさかっ、、

「お前がさっき言っていた男の子は俺のことだよ。あの時、6歳の子は俺と凪しかいなかった。」

あっ思い出した。

「蒼斗笑って、、」

震えそうな声で聞いた。

ニコッ

彼は、誰にも見せたことにない満面の笑みでこちらを向いた。

目元はクシャってなっていて、左側にはエクボがある。

「全然変わってないね。」

と嬉しいような泣きそうな声で言った。

「でも、お前は変わった。あんなに真っ直ぐだったのに、高校になって再開したら、作り笑いして、人に引っ付いていた。やっと会えると思って期待してたのにこんなにも変わっちまって。」

また、昔話をされた。

だけど、今はそれすらヤダくなくなっていた。

「蒼斗が私のこと好きならなんでもいいよ。」

流石にやばいと思ったが、今言わないと離れてしまいそうで怖かった。

「そうか。そういえば、お前の返事聞いてないな。」

彼は意地悪そうな顔をして言った。

「好きだよ。今までは、問題児で宇宙一大嫌いだったけどね、助けてって言わせてくれた頃から、私は変わった。蒼斗のおかげで変われたよ。」

やっぱ恥ずかしいなと思いながら、嬉し涙が込み上げてきた。

「おぉどうしたんだよ」

「嬉し涙が」

彼は笑いながらも、なだめてくれている。

「ほら、まだアイツと仲直りしないとだろ?」

アイツとは夏奈の事だろうか。



そうだ。

今はちょうど、中休み。

今日はサボり日です。