分担した仕事は思いのほか重く、残業のできない紗良は毎日必死にこなしていた。
いくらまわりにサポートするからと言われても未経験の作業を教えるには時間がかかるし、効率的ではない。
紗良とて慣れない作業が発生しているため、自分のことで精一杯なのだ。

最初、二週間の期間限定だという話だったが、気づけばそれは一ヶ月に延び、さらに二ヶ月目に入ろうとしていた。

さすがにそこまで時間が経てば紗良も時間配分など上手くさばけるようになってくる。
だがそれは余裕で仕事ができているわけではなく、努力して頑張っているからだ。
当然、松田然りである。

そんなとき、再び主任に呼び出された紗良と松田は、依美が切迫流産で入院すると聞かされた。
そのため、負担は変わることなくそのまま紗良と松田の仕事になってしまった。

「岡本さん、妊娠してたのね。まあ、薄々そんなんじゃないかと思っていたけど」

「そうなんですか?てっきり大病でも患ったのかと思ってました」

「切迫も大変だけどねー。無事に乗り越えられるといいわよね」

「本当ですよね」

「まあでも、私たちの負担は変わらずだなんて、主任もひどいと思わない?他に人雇ってくれたらいいのにねぇ」

「松田さんは仕事大丈夫です?だいぶ負担じゃありません?」

「しんどすぎでしょ。もうお婆だからさ、無理させないでほしいわよ。しかも帰ったら親の介護が待ってるのよ。ほんとしんどいったらありゃしない。そういう石原さんこそ、息子さんいるんでしょ」

「はい、なかなかにバタバタな日々を送っています」

「やっぱり私、主任に訴えてくるわ。もう一人雇ってくださいって。だいたい派遣の私たちに仕事押しつけすぎなのよ。ねっ?」

「……そう、思います」

決して依美が悪いわけではないことはわかっている。
わかってはいるのだが、一言くらいメッセージをくれてもいいのに、と紗良は小さくため息をついた。
疲れはピークに達していた。