「あー出会いがほしい」

リカが嘆くように呟く。
待ってましたとばかりに航太はリカの前に座り、ニカッと爽やかな笑顔を向ける。

「ここにいるじゃん」

「どこに?」

「俺だよ、俺」

「小野先輩は好みじゃないです」

「うわっ、リカちゃんひどっ!」

「滝本先輩の方がイケメンで優しくて好きです」

「あらやだ、リカちゃん面食いねぇ」

「深見さん、俺に追い打ちかけないでください。杏介もなんか言ってやれ」

「え?」

急に話を振られ、心ここにあらずだった杏介はキョトンとしたあと、適当に返事をした。

「あー、うん、ごめん」

「ガーン!ひどいです!」

リカが机につっぷして大げさに泣き真似をする。
航太は呆れた顔で杏介の肩を叩いた。

「お前、意外と冷たいのな」

「いや、なんでそうなる……」

「はいはい、お遊びはその辺にして。お客さんとトラブルは起こさないように気をつけてちょうだいよー」

深見が手を叩いて場を仕切り直し、三人は「はーい」と空返事をしてそれぞれ業務に戻った。