「え、ウォーターパークですか?」

いつものラーメン店で杏介の接客をした際コソコソっと話された話題に、紗良は目を丸くして驚いた。

ウォーターパークとは、県内にある大型プール施設だ。
流れるプールやウォータースライダー、キッズ専用屋内プールも充実していて人気がある。
そのチケットを、杏介はくれるという。

「仕事の関係上チケットをたくさんもらって。もし、よかったら、なんですけど。その、海斗くんプール好きですし」

「とてもありがたいのですが、私泳げなくて。海斗を連れていってあげたいけど。どうしよう……」

うむむ、と紗良は悩む。
確かに海斗はプールが大好きだし、先日テレビでウォーターパークのCMが流れた際も「ここいきたい!」と騒いでいた。
けれど自分が泳げないことがネックになっていて重い腰が上がらないでいたのだ。

そんな紗良の様子を伺いつつ、杏介は数日前から考えていたことを思い切って口にする。

「……えっと、もしご迷惑でなければ一緒にどうですか?」

「え、先生とですか?」

「はい。あ、えっと変な意味ではなく。僕は泳げますし。独り身なので暇ですし」

こんなありがたい申し出があるだろうか。
杏介が一緒に行ってくれるなら紗良が泳げなくてもなんとかなるだろうし、なにより海斗が喜ぶだろう。

「あ、あの、ぜひよろしくお願いします」

食い気味に頷けば、杏介は柔らかく笑みを落とした。