ある日のことだ。

海斗が保育園で描いてきた絵を、得意気に披露していた。

「これが、かいとで、これがさらねえちゃん、これがばあば」

「すごい、上手に描けてる」

「海ちゃんは絵の才能があるねぇ」

お世辞にも上手とは言えないような顔っぽい何かと塗りたくった何かだが、海斗が一生懸命描いたものは何だって愛おしく感じる。

「海斗、これは?」

もうひとつ、顔っぽい何かが描かれていて、紗良は何の気なしに尋ねた。

「これはねぇ、パパ!」

元気よく言うものだから、紗良は思わず言葉に詰まった。

海斗の両親が亡くなったのは海斗が二歳の時。
だから両親の記憶なんてほとんどないのではないかと勝手に思っていたけれど、もしかして何か覚えているのだろうか。