そう思うと、もう、そうとしか思えなくなる。
この紗良の異常な行動は照れているからだろうか。
だとしたら嬉しすぎてたまらないのだが。

杏介はイルカのぬいぐるみをそっと抜き取る。
と、「あっ」と紗良は声を上げてイルカの行方を追いつつ杏介とバッチリと目が合った。

「おはよう紗良」

「……おはよう」

ごまかしようのない状況に観念して紗良も挨拶を返す。

「ねえ、さっきのもう一回して」

「さ、さ、さ、さっきのって?」

「キスしてくれたよね?」

「……お、起きてたの?」

「んー?それで起きた。夢うつつだったからちゃんとしてほしいなーって」

「……」

「照れてる紗良も可愛い。毎日紗良のキスで起きたい。一日頑張れそうな気がする」

「わっ」

ぐいっと腰を引き寄せられてひときわ杏介と密着する。
こんなこと初めてじゃないのに、いつもちょっと恥ずかしくて、でも嬉しい。
杏介の胸に耳を当てれば、トクトクと心臓の音が聞こえる。
とても安心する音に紗良は目を閉じた。

と、突然体がぐいんと回る感覚に紗良は「わわっ」と声を上げる。
横向きで寝ていたのに仰向きにされ、上から杏介が覆い被さってきたのだ。