微睡みのなか目を開けると飛び込んできた顔に、紗良は一気に目が覚めた。

「きっ……」

杏介さんと叫びそうになって慌てて口を閉じる。

目覚まし時計のアラームはまだ鳴っていない。
ほの暗い部屋の中。
杏介と、反対側にいる海斗の規則的な寝息だけがすーすーと聞こえてくる。

イルカのぬいぐるみを抱いた紗良は杏介に包まれるようにして寝ていたようで、しばし思考が止まる。

(……なんで?)

というのも、海斗を真ん中に三人で川の字になって寝たはずである。
それなのにどういうわけか海斗は紗良の背中側におり(しかも寝相が悪すぎて布団からはみ出ている)、紗良は杏介にぴっとりとくっついている状態。
紗良の腰には杏介の腕が巻きついている。

要するに、イルカのぬいぐるみを抱いている紗良を杏介が抱いている、という形になるわけだが。

それを理解した瞬間、紗良の心臓はバックンバックンと騒ぎ出した。

結婚して四ヶ月ほど経つというのに、隣に杏介が寝ているというだけでドキドキとしてしまう。
間近に見る杏介の寝顔は、男性なのに綺麗で可愛いと感じる。
長い睫毛や通った鼻筋、形の良い唇。
そのどれもが愛おしく感じて胸が騒ぐ。