「……紗良の前でもかっこいい俺でいたかったんだけどな」

「じゅうぶんかっこいいし、知らなかった杏介さんの一面が見れて嬉しい」

杏介はぐっと息をのむとチラリと紗良を見る。
運転中のため、すぐに視線は進行方向を向くのだが。

「……紗良っていつも運転中にそういうこというよね。手が出せない」

「な、何言ってるの、もう!」

よからぬことを想像して紗良は焦る。
そんな時に背後から声がして紗良はビクッと揺れる。

「ねー、DVDおわったからかえて一」

「あー……はいはい」

「なんかときどき海斗がいること忘れるな」

「ほんとに。DVD効果がすごいね。すごく静か。ていうか、また緊張してきた。子連れだなんてびっくりされるよね。結婚に反対されないかなぁ」

「父さんも子連れで再婚してるんだから、それはさすがにないと思うけどなぁ」

長らく走ってきた高速道路を下りて一般道に入る。
杏介の実家はもうあと少しだ。
紗良と杏介の緊張は高まっていった。