唇に、少し触れるだけのソフトキス。 さく先輩はそれだけで満足したのか、私からあっけなく離れる。 だけど――困ったのは私の方だ。 何に困ったかと言うと、 「(足りない……)」 さっきあれだけ濃厚なキスをしといて、去り際に小鳥がついばむようなキスを一回されただけじゃ……モヤモヤして、「もっと」ってねだりたくて仕方ない。 「じゃあ俺いくね、もう授業終わるから美奈ちゃんも、」 「……っ」 あぁ、ダメなのに。 こんな事、絶対言ったらダメなのに。 でも――私の口は動いてしまった。