六月。

梅雨入りのニュースが朝から流れていて、獅子くんとなかなかお昼を食べられなくなることに気が付く。


最近、獅子くんのことを考えると、胸がきゅっ、っとするようになってきた。

これって、なにかの兆しなのかな。

また、玲に聞いてみよう。


お気に入りの水色の傘を広げて、わたしは学校に向かった。








お昼休み。

雨がやまないので、わたしはお弁当をもって食堂に向かった。

隣のクラスのあすちゃんと、一緒に食べるんだ。



あすちゃんと一緒に食堂の入り口まで来たところで、足を止める。


獅子くんがいた。

顔を真っ赤にした女の子となにかしゃべってる。


「…きです」

「…めん、いまはほかに…な人がいるんだ」


とぎれとぎれに会話が聞こえてくる。



「宇佐。王子が告られてるよ」

「えっ、告白なの?!」

「どうみてもそうでしょ」



そっか…。
仲良くなってからは、あまり気にしてなかったけど、獅子くんは、学校の王子様。
女子からモテモテなんだったっけ。



「あれは、フラれたね」


あすちゃんに言われてみると、女の子は顔を真っ赤にして泣きながら、教室に戻ろうとしていた。


獅子くんは、あの女の子のことを、フったのか。




ぼーっと視線を獅子くんにうつすと、獅子くんもこっちを見ていた。

どうしよう。

見てたこと、ばれちゃった…。



ぎこちなく笑おうとしたけれど、その前に目をそらされてしまった。

あすちゃんはもう、食堂の席を取りに行っていて。

わたしは一人、立ちすくんだ。




雨の日の獅子くんは、ライオンじゃない。