玲に、登下校の特訓は合格と言われた。

これで、獅子くんといつか、登下校はできるようになるかもしれない。


少しうきうきした気分で、屋上に向かった。

獅子くんはいつも通り、あぐらをかいてそこにいて。


「宇佐」

「獅子くん!」

「やべえ、名前呼び最高」


獅子くんが目を細めて笑う。


いつもなら、そこから獅子くんは、いろんな話題を振ってくれるけど、今日は黙っていた。


今日のお弁当は、三色弁当。
大好きなはずなのに、あんまり味がしなかった。


無言のままお弁当を食べ終わって、お互い無言で水筒を飲み始めた。

どうして、今日…。
黙っているの?獅子くん。

わたしからもがんばって話を振ろう、と思って口を開いたその時。


「手、つなご」


ぽつりと、獅子くんがつぶやいた。


「えっ」

「ん」


獅子くんの大きな手がわたしの手に触れる。


あっ。


「恋人つなぎ」、じゃなかった。

普通のつなぎ方。「友達つなぎ」。



獅子くんのぬくもりが伝わる。

恋人つなぎより、なんだか落ち着く。

違う。
獅子くんだから、落ち着くの?



「どう?」


聞かれて驚く。


「どう?手、つなぐの」

「…落ち、着いた。手、つなぐの、いいかも」


素直に言うと、獅子くんは笑った。


「ほんとは恋人つなぎしたいんだけどね」

「…っ」

今朝、実はその練習をしていたとは言えない!

でも。


「ねえ、獅子くん」

「うん」

「わたし、手はつなげるようになった。だから、これから、もっといろんなのを練習して、獅子くんに迷惑かけないように頑張るね」


つながった手のぬくもりを感じながら言う。

獅子くんはまた笑った。



「迷惑じゃないよ。ゆっくり、一緒にやってけばいいじゃん」

「…うん」



優しい。優しすぎるよ。

獅子くん。獅子くんのために、わたし、特訓頑張ります!