遠回りをして教室に行ったら、宇佐はもうそこにいた。


いつも通り、窓際で一人、本を読んでいた。






この間、教室で一度、宇佐に話しかけたことがある。
何気ない、次の教科の話だったんだけど。


宇佐の顔はこわばって、すぐに逃げられて、あとで屋上で言われた。


「獅子くんみたいな人気者が、わたしなんかと教室で話してたら、変な噂になっちゃう。
 獅子くんに迷惑かけちゃう。だから、わたしたちは屋上でだけ話したい」


むかついた。

俺ら、友達らしく話すこともできないのか。

こんなに好きなのに。こんなに。



友達で、終わりたくないのに。






それからは、もう教室では話しかけないようにしてきた。

なんとか宇佐に、心を開いてもらえるまで、屋上で攻めようと思っていた。





(宇佐…)

(さっきはなんで手をつないでたんだよ)

(なにかの間違いって言ってくれよ)


宇佐を見つめながら、心の中で叫ぶ。




「浮気するなよ」とか、「俺以外の男に近づくなよ」とか。

言えないこの関係が、

もどかしい。