White Snow   ―元彼を忘れられない私の前に現れたのはあまり話したことのない彼でした

季節は冬になっていた。
別れて4ヶ月たったが、まだ彰のことを忘れられずにいる。


けれど彰は私のことなんてもうすっかり忘れてしまったのだろう…私がいる前で彼女との交際を公にした。

今日の午後、営業部に書類を持ってきた彼女を、彰が下の名前で呼び捨てにして呼んだ。
総務の彼女は入社2年目で、その可愛らしさから男性社員から人気が高かった。
周囲の男性社員は悔しがり、二人は恥ずかしそうに見つめ合い、微笑み合った。

彰が名前で彼女を呼び止めたのは、うっかりなのか?それとも故意なのか?
頭のいい彰のことだ。きっと男性社員に対する牽制に違いない。


彰と私は、会社で付き合っていることを隠していた。同じ営業部の同期。周囲に気を遣わしたくなかったから、必要以上に一緒にいたりするようなことはしなかった。
そのため私たちが付き合っていることも、別れたことも、気付く人はいなかった。

同じ営業で働いた7年間。付き合った3年半の間。
彰が職場でうっかり私のことを「智花」と呼んでしまうことは、1度もなかった。

彰とあの子が付き合いだしたと聞いて、胸が深くえぐられるように痛んだ。
苦しすぎて、息ができない。


居た堪れなくなった私は、スマホが鳴ったふりをして、営業室から出て行った。
営業室から出る瞬間、ちらりと彰に目をやったら、彰の隣にいる彼女と一瞬目が合った気がした。
でも……彰が私の方を見ることは…なかった……。