駐車場で再びヘルメットをかぶる。うまく顎のところを止めれなくて前野君に止めてもらう。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そういえば、このヘルメットは前野君のだって言ってたな。
「ねえ、このヘルメットって前野君の?」
「うん。俺の」
「それなら、前野君がかぶってるのは誰の?」
「これも俺のだけど、兄貴とか友達とかも被るから。
安心して、それは俺しか被ってないから。
他の男が被ったメットなんて倖さんに被せたくないしね」
確かに知らない人が被ってるのは嫌だな。
「なんかね、このヘルメットいい匂いがするよ」
というと、前野君は目を丸くして、顔を赤くした。
「う・・・」

返事をしない前野君は手袋を渡してくれた。
「これも前野君の?前野君って手が小さい?ぴったりなんだね。・・・あれ?手、大きかったよね?あれ?」
手を繋いだ時、前野君の手は私の手をすっぽりと覆うくらい大きかったと思い出す。

「それは俺のじゃないよ。俺のじゃ、ぶかぶかだよ」
「そうだよね!」
私にぴったりサイズの手袋をじっと見る。

「彼女さん、怒らないかな?」
と呟くと、慌てて、
「それ、倖さん用にさっき買ってきたやつだから!」
と言われた。

「わざわざ?」
うんと頷く。
「それに彼女いないから。彼女いて他の女の子を誘ったりとかしない」
「あ。そうなんだ。前野君も律儀なんだね」

ふと彰のことを思い出してしまい、頭を振る。
ヘルメットが重くてうまく動かせない上にフラッとしてしまった。
「何やってるの?」
と笑われた。

バイクに乗せてもらい、出発する。

今度もドキドキしたけど、前野君の背中にしがみついていると、彼の背中が広いこととか、見た目より体ががっしりしていることに気が付いた。
それが、男性だということを意識させ、バイクに乗っているドキドキとは違うドキドキを感じた。