週末。
会社近くにある、営業部行きつけの居酒屋で忘年会は開かれた。

会社の飲み会は申請すれば一人5000円まで補助が出る。営業部は忘年会にまとめて申請を出すのか慣例になっていた。
そして、くじ引きで当たった私と、1年目の男の子が今回の幹事だったから休むわけにはいかなかった。



会も始まって一時間もすれば、みんな酔いが回ってきて好き勝手なところに移動して飲み食いし、おしゃべりをし始める。
私は後輩の松本さんと沖さん、先輩の北山
さんと四人で女同士固まって飲んでいた。

男性陣は彰と総務の彼女の話題で持ちきりだった。

どちらから口説いたのかとか、いつから付き合っているのかとか、どんなデートをするのかとか、どこに惚れたのかとか。
酒の回った男性社員たちの質の悪い、少しHな質問も飛び交っていた。大声で彰をからかうように話しているから、離れた私たちの所まで会話が聞こえてくる。

ほんっっっとに、聞きたくもない!
彰も私がいるせいか、あまり語らない。
その代わりになぜか同期の男性社員が答えている。

つまり、その同期には私と付き合っていたことは言わなかったくせに、今の彼女の話はしていたんだな。胸糞悪い!内緒にすると決めたことだったけど、イラっとする。
私はハイボールをグイッとあおった。


「男ってバカですよね」
と一緒テーブルを囲んでいた松本さんがぽそりとつぶやいた。
私たち3人はうんうんと相槌を打つ。打ちまくる。

「中村さんの彼女、どんな子か知ってます?」
松本さんの問いに3人は思い思いに印象を答える。
「え?総務のかわいい子でしょ?」
「男どもが『かわいいかわいい』って言われてる子」
「ちょっと計算上手っぽい子」
「まあ、実際に関わったことがないからわかんないんだけどね」

少し間を空け、松本さんが
「私、あの人に彼氏とられたんです」
と小声で言った。

「えー!」
「えー!」
「えー!」
松本さんのカミングアウトに3人は声を上げた。