ねぇ、先輩。


「お前とお揃いだよ。サボり」

にっ、と笑う先輩の唇の隙間から白い歯がのぞいている。

……先輩も、サボり。

そのことに、なんだか妙な安心感を抱く。

「ちなみに何の授業?」
「体育です。ほら、あの長距離走です」

校庭をビシッと指差すと、先輩は納得したようにうなずいた。

「あ、あれお前のクラスなんだ。たしかにお前、トロそうだしな」
「トロそう……!?」
「どうせ、長距離走が嫌で逃げてきたんだろ?」

……なんでこんなに当たるのだろう。
控えめに首肯すると、先輩は「当たりかよ」とまた笑った。

その瞬間トクン、と甘い心音がしたような気がして、思わず目を逸らす。

……今のは私の心臓の音?


心に問いかけてみるけれど、その答えは返ってこなかった。