来栖さんも余裕そうだけど、六花ちゃんだってすまし顔で淡々と走っている。
二人は互いに譲らぬまま、競り合いながら同時にゴールした。
「すっげーな。羨ましい」
感心したようにうなずく彼の方を向くと、ちょうどこちらを向いた彼の瞳と視線が絡み合った。
「俺、三年の日向っていうんだ。お前は?」
「一年の南です」
……やっぱり先輩だったんだ。
思わず縮こまると、それに気付いた先輩がクシャッと私の頭を撫でた。
「なにビビってんだよ。なんもしねーよ」
クスリと笑みが降ってくる。
頭にのせられた大きな手が、私の意識を全部持っていってしまう。
「あ、の。先輩……」
たぶん私、真っ赤だ。
先輩を見上げると、なぜか先輩はスッと目を逸らした。
それからゆっくりと目を伏せて、私の頭から手をどける。



