ねぇ、先輩。

「唯一の取り柄がなくなって、絶望しかなかった。俺なんか生きてる価値なんてあるのかなって」

すうっとあかりが溶けて闇夜に消える。
そしてまた、次の花が咲き誇る。

「だけどあの日、富柚子と出会えて俺の世界は一変した。富柚子に会えるんだったら、保健室登校だったとしても学校に行こうって思った」

隣を見ると、ひどく優しい瞳が私をまっすぐに見つめていた。
トクン、と甘い心音が響く。

「俺と出会ってくれて、俺を変えてくれて、ありがとう」

お礼を言うなら、私の方だ。

助けてくれて、優しく名前を呼んでくれて、綺麗な景色を見せてくれて。

そして、恋という感情を教えてくれた。

「私の方こそ、ありがとうございます」


花火のあかりに照らされて、先輩の顔がより美しさを増す。