ねぇ、先輩。


手を繋いだままリンゴ飴の屋台に行くと。

「あれ、フユとアカリ?」

リンゴ飴屋台にいたその人物に、息を呑んだ。

「り、六花」
「六花ちゃん……」

二人して声を上げ、え?と顔を見合わせる。

「なんで六花ちゃんがここに……?」
「私は部活の先輩に頼まれて手伝ってるの。……って、今はそんなことはどうでもよくて。それって、そういうこと?」

六花ちゃんはにんまりした。
その視線は繋がれた手に注がれている。

それに気付いて、互いにパッと手を離す。

「へぇ〜。フユとアカリがねぇ」

六花ちゃんはにやにやして私と先輩を交互に見遣った。

「……フユ、って誰だ?」

先輩が疑問を上げる。
それは私も同じだった。

……アカリ、って誰?

キョトンとしていると、六花ちゃんは「まさかだけど」と呆れた笑いを浮かべた。

「もしかして二人とも、自己紹介せずに付き合ったの?」
「そんなわけないだろ。ちゃんと南って知ってるぞ、俺」
「私も、日向先輩って知ってるよ」

六花ちゃんは「あの……」と眉を寄せる。

「二人とも苗字しか名乗らないでどうするの」

え、と声が洩れた。それは彼も同じで。