ドキッ。

心臓がひとつ跳ねた。

先輩の顔が、あまりに綺麗だったから。

目の前にひろがる景色よりも、綺麗で、美しくて、そしてあたたかい。

じわりと、心の中に柔らかい感情がひろがっていくのを感じた。


「雨があがりそうだったから、綺麗だろうなと思って」


誇らしげに言う先輩。

「ありがとうございます。連れてきてくれて」

見上げてお礼を言うと、先輩は破顔した。

「今、この瞬間の景色をここから見られたのは、俺とお前だけだ。それってすげー特別なことだと思わないか?」

……特別。


雨が上がって太陽が差し、宝石のように世界が輝きだす瞬間を二人だけで共有している。

この時間はたしかに特別で、私にとって宝物のような時間だ。

コクリとうなずくと、先輩は自らの手に少し力を込めた。


「───俺」


硝子玉のような瞳が、まっすぐに私を見ている。
トク、トクと高鳴る鼓動。