「俺、いい場所知ってんだよ。いいから黙って抱かれてろ」
有無を言わせず、ずんずんと歩く先輩。
……授業に戻らなきゃ。
そんな気持ちとは裏腹に、先輩に連れていってもらいたいという淡い願望が、心の中に生まれる。
そんな私の気持ちを見透かすように、先輩はクスリと笑った。
なんだかまた心を読まれている気がして、表情を見せないようにうつむく。
そうしてしばらく運ばれて。
「顔上げろよ」
降ってきた声におそるおそる顔を上げると、目の前には雨上がりの空がひろがっていた。
葉に落ちた水滴や水たまりが、雲の隙間からのぞく太陽の光を受けて、宝石のようにキラキラと光を反射している。
空には大きく虹がかかって。
さっきまでのどんよりとした暗い天候とは一変、青、白、そして虹色の世界がひろがっていた。
「綺麗……」
感嘆の声を洩らす私を抱いたまま、先輩は「だろ?」と目を細めた。



