ねぇ、先輩。


「……ったく」

先輩は身を屈めて私の顔を覗き込む。

「ちょいと失礼」

いつかの日と同じように、おどけた口調で言う先輩。

その直後、ふわりと身体が浮いた。


「え……っ?」


あっという間に抱きかかえられていて、気が付けばものすごく近くに先輩の顔があった。

ふわり、と香水のにおいが鼻腔をつく。

その瞬間、ドクドクと心臓が早鐘を打ち始める。


「またな。彼女が不安にならないようにしてやれよ、凪」


白い髪の男の子にそう一言告げて、私を抱えたまま先輩は保健室から出た。