ねぇ、先輩。


けれど、いくら待っても痛みはやってこなかった。

おそるおそる目を開けると、彼の腕を掴んでいる日向先輩の姿があった。

「何してんだよ」

低く唸るように、彼をまっすぐにとらえたまま先輩が問う。ぐ、と彼の腕を握る先輩の手に力がこもった。

「は、離せよ……!」

彼は青ざめて、先輩の手を振り払うと、逃げるようにパタパタと去っていった。

「大丈夫か」

その声を聞いた瞬間、一気に安堵が押し寄せてきて、身体中から力が抜ける。

息を吐きだして、へなへなと床にへたり込んだ。