「あの」
自分でもビックリするくらい、低い声が口から洩れた。
私の声に、男の子は「あ?」と振り返り、大きな目で私を威圧する。
近くで見た彼は、想像よりもずっと背が高くて、思わずビクリと肩が震える。
でも、ここで引き下がるわけにはいかない。
拳をギュッと握りしめて、震える己を叱咤し、ぐ、と目線を上に向けた。
「人の容姿をどうこう言う権利なんて、他人には無いと思います。先程の言葉、撤回してください」
一気に言い放つと、彼は目を釣り上げた。
「なんだと?」
「彼に謝ってください。酷い言葉をぶつけたこと。人って、嫌だなって思ったことは一生の傷になって永遠に残るんです」
目の前の彼は忌々しそうに舌打ちした。
「俺は正直に言ってやっただけだ。だって見たら分かるだろ、異様じゃねぇか」
「貴方の思考を押し付けてこないでください。迷惑です……!」
力を込めて言った瞬間、彼の拳が振り上げられた。
(叩かれる……!)
思わずギュッと目をつむる。



